177日目 「アイドル寮空室あり!」が素晴らしい

アイドル寮空室あり!を拝見した.すばらしい.あまりにもすばらしくて感動している.
どこがすばらしいって,どこもかしこもすばらしい.すっきりぽんP は特にお書きになるテキストがとても印象的でみごとなんだけれど,絵もストーリー展開も最高だ.
私事だが今週けっこう余裕がなくてつらかったんだけど,「アイドル寮空室あり!」にはホントに癒されて,また元気をもらった.感謝の言葉もない.

で,例によってブログ検索してみたけど,ガッツリ書いていらっしゃる記事はというと…今のところそれほど見つからない.が,以下の二つの記事は丁寧で情熱あふれていてすごく良いと思った:

アイドル寮空室あり!を分析し、すっきりぽんPの上手さを浮き彫りにする試み - 続・空から降ってくるので

アイドル寮空室あり! - ニコに棲むもの

これらを拝見していると,なんかいろんな考えが浮かんでくる.
今は考えをまとめる時間も,シリーズをもう一度見直す余裕もなくて,すっきりぽんPのブログも全てを拝読してはいないんだけど,書きとめておかないと忘れてしまうかもしれないのでメモ程度にちょっと書いておきたい.それにぷよm@sのpart14が来たら,考えていたことがどっかに飛んでいってしまうかもしれないので.

ネタバレ格納.





上の二つのブログ記事,前者の方は第一話冒頭からしばらくのシーンをとても詳細に分析されている.この作品は冒頭がほんとうにすばらしく…つーか,すばらしいしか言ってないな私.まあ,それはともかく,冒頭ではごくナチュラルに主人公の性格とか,舞台周りの設定とかが提示されている.なんか紹介記事を拝見していると第一話が思い出されてくるなあ.
で,第一話の白眉といえばやっぱりこれだろう.春香さんのセリフ,

「うん。弱音はぜんぶ吐いた。
よし。」

爽やかな表情とも相まって,これがじつにいい.
先行きがよくわからない,という不安を自分でしっかり受け止めていて,でも前向きになれるというところがたまらなくかっこいい.ここまで来て,私はがっしり掴まれた.もう離されない.
やっぱ物語ってものはストーリー展開がどんなに上手かったとしても,キャラクターに惚れなければ好きにはなれないと思う.その点,この春香さんは最高だった.

さらにやられたのはpart4の,春香さんがアイドル長屋にとどまることを決めるシーン.もうこのエピソードは何から何までいい.
たぶん,アイドルになるってことだけを目指すならば,765プロを出て行く方がじつは正解だと思う.効率というか近道をすることを考えるならば.
しかし春香さんはそうしない.なぜなら,長屋のみんなが春香さんのことを想ってくれているから.だから私もこの人たちと一緒に頑張るんだ!という流れ(私の独自解釈が入っているかもしれないが).これ,最高だろう.なんてかっこいいんだ.

….

さて,後者のブログ記事をお書きになった方は,ストーリーや構造を,ややメタなレベルから分析されている.この作品がさまざまな物語を参照しながら語られていることを考えれば,作品の読解としてとても自然なアプローチだと思う.

で,この記事は,読了後にいろいろ思い浮かぶことがあった.「疑似家族もの」という読み方をされているのが印象的で,私の理解ではおそらく,疑似家族の一員になるというのはオトナになるための段階を経るということなのだろう.

その点で,たしか5.5話だったと思うけど,社長とPが「これから気楽でいられなくなるアイドル達にとって,心のよりどころ(だっけ?)になるのが今の生活をすごしたことなんだ」みたいなことを話してたけど,もうそのセリフ,最高だった.要するに孤独になったときでも,心の中ではみんなと一緒にいられる場所がある.それが今このときなんだ,ということだろう.あるいは,大人になったあとでも心の中で子供に帰れる場所ともいえるかもしれない.…なんかいま書いていて涙が出そうだ.そんな生活,私も一度は送りたかったなあ.

….

で,ここからがまだまとまっていない漠然とした考え.上の「擬似家族」というご指摘に触発されて思いついたことなんだけど.
マンガ作品には,学生時代に共同生活を営む,という設定のものがとてもたくさんある(私はマンガ以外の物語はぜんぜん詳しくないけど,マンガ以外でもそういうのはいっぱいありそう.まあヤングアダルト作品の典型ではある).そういうタイプの話を,マンガでのパイオニアの一人とおぼしき萩尾望都さんに敬意を表して,ギムナジウム作品,と呼ぼうかな.寄宿舎もの,って感じで.
で,ギムナジウム作品は大きく二つに分けられると思う.

ひとつは,内側を志向する物語.
もうひとつは,外側を志向する物語.

内側を志向する物語は,閉じられた環境の中で個々人の関係に焦点を当てていく話だ.トーマの心臓とか風と木の詩なんかはたぶんそっち.最近ではそういうのはBLとか百合作品に受け継がれていってるのではないかと思う.
外側を志向する物語は,いまのメジャー商業作品でのギムナジウム作品の主流で,登場人物たちは一過的に共同生活に参加するけど,やがてその外を目指していく.「アイドル寮」もこちらに入るだろう.

で,外側を志向する物語は,さらに二つに分けられると思う.
ひとつは,モラトリアム型
もうひとつは,合宿型

モラトリアム型は,登場人物たちが最初は明確な目的とか目標とかをもっていない.で,共同生活をしていくうちに目標を見つけたり,何かをする覚悟をきめたりする.「めぞん一刻」は学生生活だけじゃないけどモラトリアム型だと思うし,最近の作品だとハチクロなんかが有名な作品かな.

合宿型は,登場人物とかグループとかに,すでに目的や目標がある.で,共同生活の意味は,その目標を達成するための成長をすること.スポーツものとかに多いから合宿型と名付けたけど,別にスポーツに限ったものではない.たとえば…最近だと何があるかなあ.野球の「メジャー」の高校編とか?あまり最近じゃないかな.あれはプロになる,甲子園で勝つという明確な目標があって,それを達成する力をつけるための共同生活なわけだよね.

ま,要するにモラトリアムも合宿も,共同生活の中で成長することが物語として描かれるんだけど,その成長の方向が違うわけね.

….

で,なんでこんなことをグダグダ書いたのかというと,「アイドル寮」のすばらしさとして,この物語は「モラトリアム型」と「合宿型」のどちらの要素も兼ね備えているんじゃないか?ってことを言いたいわけね.もしくは,その二つの間でゆらめいている,と言ってもいいかもしれない.だから一粒で二度おいしい.この作品は合宿型とモラトリアム型を行き来していて,最近は合宿タイプの話からモラトリアムタイプの話にちょっと流れが行っている気がする.
ま,そんな感じで,こんなところにも「アイドル寮」のすばらしさが現れているのではないかと思うわけだ.

ところで,この両方の要素をもってる作品,私は他にあまり思いつかない.たぶんそんなに少なくはないと思うけど.ぱっと思いつくのは,これも萩尾望都だけど「11人いる!」くらいだ.他にどういうのがあるだろう?

….

…….

………まあそんなことを,今ぼんやりと考えているのであった.
最後の話はきちんとまとまっていないので,もう何回か作品を見直してからいろいろ考えて,具体的な例も出しつつ補足できればなー,と思っている.けど,やっぱぜんぜん不正解でした,って感じで考えを改めるかもしれない.つーかその可能性の方が高そう.

メモ書きと言いながら,おっそろしく長文になっちまった.

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by LIBlog | 2009-10-30 23:39 | 動画サイト関連 | Comments(0)
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