200日目 ぷよm@s第二部までを振り返る 美希と千早編その2

前記事の続きを.
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【アイドルマスター】ぷよm@s part1【ぷよぷよ】

前回は,突出した動機を持つキャラクターは,ものすごい勢いで成長するのだ,という話をした.
そしてその姿を見て,周りのキャラクターたちは自然と引っ張られていく.本記事では,そのことについて書きたい.

というわけで,早々にネタバレ格納.




美希千早は,最初から動機がずば抜けて強く,そして物語全体を通してまったくそれが動かない.そしてそれ以外の面々は,その様子を見て,動機そのものが動かされていく.
何があっても人の心が動かないという様子をみて,人の心が動く.
これは人の心が動かされるときの本質のひとつだろう.

余談だが,美希も千早も,どちらも「人の心を動かそう」と思って行動してはいないことに注意したい.むしろ動機の根源は,どちらも利己的である.二人とも自分が強くなることしか考えていない.
それでも,人は心を動かされる.その成長に,そのかっこよさに,そして達成したものの大きさにしびれて.

さて話を戻して,ぷよm@sでは,どのように人の心が動かされ,動機を与えられ,練習に駆り立てられるようになるのだろうか.
個人的には,ここの描かれ方はとても自然で,うまいと思った.

前回,ぷよぷよをプレイする動機は「楽しさ」「勝つこと」の二つに分けられるという話をした.美希は「楽しむ」ことに,千早は「勝つ」ことに極端に振れているけれど,他のキャラクターにとってはこの二つは重なり合うもので,どちらに力点を置くかがキャラクターごとに違う,と.
以下,キャラクターによる力点の置かれ方の違いと,動機の動かされ方の違いについて確認していきたい.

初回からpart14までに,あきらかにぷよぷよを練習するモチベーションが急上昇しているキャラクターは,真,亜美真美,春香の4人だろう.
このうち,真は「楽しむこと」に偏っていて,春香と亜美真美は「勝つこと」に偏っている.
誰々を倒したい,勝ちたい,という発言は,春香や亜美真美からは出ているけど,真からは出ていないからね(…多分.見落としがなければ).

そして,ぷよぷよ自体に偏っている真は,ぷよぷよ自体に特化している美希によって動機を与えられる.

「背筋が凍るほど強かったよ、美希は。」
「うらやましかったよ、美希と千早の闘い。ボクも、あんな闘いがしてみたいって思った。」
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正確に言えば「美希と千早の闘い」によって動機付けられていて,そのことを美希に宣言している.

そしてぷよぷよの結果に偏っている春香,亜美真美は,ぷよぷよの結果に特化している千早によって動機を与えられる.

千早に事実上敗北して燃え上がる涙目の春香さん
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「千早お姉ちゃん負けたけど、ピヨちゃんも不沈艦じゃないのは充分わかったよ!」
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ここらへんの動機の与えられ方の構造と描写は非常にうまい.

要は,視聴者である私だって,美希と千早に心を動かされているわけだ.その私の心をそのまま映し出しているのが,二人のまわりにいるキャラクターなのである.
ずば抜けた存在と,その引き立て役だけがいるのでは,その世界に私は入り込めないだろう.
その世界の中で,私のかわりにずば抜けた人に感動し,心を動かされるキャラクターがいる.それだけで,物語への入り込み方が違ってくる.キャラクターのすばらしさが倍増するのだ.

…また話がちょっとズレるが,小鳥さんは面白い位置にいる.
小鳥さんのぷよる動機は,基本的にはぷよぷよそれ自体だ.
だけど,ランキング戦敗北のペナルティーは小鳥さんにとってきわめて重大なので(笑),小鳥さんはぷよぷよ戦の結果に対しても思いっきり力点を置かないわけにいかない.
ぷよぷよ自体と結果,「楽しむこと」と「勝つこと」のせめぎ合いの中にいるのが小鳥さんだ.

だから,ぷよぷよ自体への興味が強すぎる美希に影響されたときは,思わず結果の方がどうでもよくなってしまう.
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そして逆に,結果に対して興味が強すぎる千早に影響された時は,思わずぷよぷよ自体をやらない,やらせない方向に向かおうとする.
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ふたつの動機の間で揺れ動く小鳥さんを見ているのもなかなか楽しいものがある.

閑話休題.

そうやってキャラクターの「動機」が動かされる場面を見ていると,やはり思う.
ぷよm@sは,第二部までがプロローグだ!というのは,あながち穿った見方ではないかもしれない,と.

主人公が主人公たるには,成長が必要だ.
そのためのスタートラインとして,強い動機がいる.
美希と千早は例外的存在だ.美希は天才ゆえに,千早はその背景ゆえに,最初から強い動機が与えられているのだから.
しかしこれからは,この二人以外が,それまでのごく普通の動機を一気に振り切って,ぷよぷよに突撃していくことになるだろう.

多くの物語で,主人公が何かの動機を得るパターンは二つあると思われる.
ひとつは,最初から強烈な動機を持っている場合.このタイプの主人公は周りを引っ張っていく側だ.
もうひとつは,物語の途中で,別のキャラクターから動機を受け取る(または最初の動機をズラされる)場合.これは別のキャラクターに引っ張られる主人公になる(そして引っ張られた主人公が,のちに周りを引っ張る).

ジャンプ系列で例を出すと,『ONE PIECE』や『HUNTER×HUNTER』なんかは前者で,『ヒカルの碁』や『SLAM DUNK』なんかは後者に分類できる…かな.

ぷよm@s は,第一部から二部までは前者の物語だった.
そして実は,それと並行して,第一部からすでに後者の物語が始まっているのだ.そして第二部を経て,第三部以降も,その物語がずっと続いていくのである.
いやいや,すごいねこりゃ.一粒で二度おいしいどころじゃないですぜ旦那.

….

さてさて.ここまでずいぶん長いこと,美希と千早のどこがすばらしいかを語ってきた.
しかしだな,「だから」ぷよm@sはすばらしいのか? 「以上の理由から」私は ぷよm@s にハマったのか?と問われると,どう考えてもそれは違う,と答えるしかない.
なぜなら,そういう要素が当てはまるような物語というのは,他にいくらでもあるからだ.

私は,ぷよm@s については「出来がいい」「面白い」というだけで語り終えたくない.私にとって ぷよm@s は特別な作品なのである.

これまでの人生の中で見てきたいろいろな物語を振り返ってみると,他のどれにもましてハマった特別の作品というのがいくつか思い当たる.どっぷりとその作品世界に入り込み,その後も折に触れてよみかえすような作品.たぶん誰でも,そういう特別な作品はあるんじゃないだろうか.

そういう作品には,その人の心の琴線に触れる何かがあるはずだ.その人が抱えてる問題,悩み,夢,あこがれ…,そういうものにシンクロするようなものが.作品自体の出来のよさ,客観的な評価とは何か別のところに.
だから作品に出会うタイミングとか,そういうものもかなり重要なんだろう.そしてそのシンクロする要素というのは,作者,作家の表現したい部分とは別のところにあったりすることも珍しいことではないのかもしれない.

私にとっては,ぷよm@sは,そしてその中でも美希と千早は,自分の中に特別に反応する部分があった.だからこそ ぷよm@s は,特別な物語の一つなのだ.

でも,それはなぜだろう.美希と千早に特に思い入れる理由とはなんだろう.

(…ということを語りたいのですが,以下は主観爆発かつ自分語りです.そういうのを不愉快に思われる方は,以下はお読みにならないようお願いします.)

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美希や千早に,私が特別に思い入れる理由とは,なんなのだろう.
これもすでに書いたことではあるんだけど,やっぱりここに本質があると思わざるを得ないので,また書く.

ふだん私は,まあふつうに仕事をしてる.
仕事なんてほとんどはくだらなくて,クソつまらないことばっかりだ.
そしてやった仕事のほとんどはムダになる.
…ムダってのは,縁の下の力持ちみたいに,評価されないけど役に立つ,という意味じゃない.本当にムダなのだ.ほとんどのことは誰の役に立つこともなく忘れられ捨てられ消えていく.そんなことのために私は,限りある自分の人生の多くをつぎ込んでいるわけだ.
何なんだこれは.なぜこんなことしなきゃいけないんだ.…と,思うことだってある.

いやまあ,なぜって給料もらって生活していくためなんだけどさ.それにしたって自分のしたことが無駄なことだなんて思うのはイヤなものじゃないか.

いや,つーかさ,みんなそうじゃない?
学生さんだって,今やってる受験勉強とかテスト勉強とかレポートとかクソつまんなくて,そして暗記した年号とか公式とかのほとんどが今後なんの役にも立たないこと,分かってるでしょ?
たまに空しくならない?

…….

でもねえ,ごくまれに,そんなつまらない作業の果てに,すごい興奮を味わうことがある.
そんなのは本当にたまにしかない.でも確かにある.
それを,その部分だけを,体現しているのが美希なんだよ.たぶんね.
美希は天才ゆえに,凡人には見えないものが見えるゆえに,興奮の度合いが圧倒的で,そして長く続く.

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その様子を見てたら,「美希になりたい」と誰でも思うだろう.
少なくとも私は思う.強烈に思う.

それじゃあ,天才ではないわれわれは,ごくたまにある興奮を味わうためだけに,ムダな作業を積み重ねていかなきゃいけないのか?

….

実はそうでもないんだな,これが.
と,言い切れるほど私は経験を積んでないけど,そうだと信じてる.そう思いたい.
それはどういうことか.

千早は,最初にこう言う.
「ゲームなんて時間の無駄ですから」
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これはもう,まさにその通りだとしか言いようがない.
これ,実はゲームを仕事とか勉強とかに置き換えたって,本質的には同じだ.
仕事なんて,勉強なんてほとんどムダ.ゴミを作り出す作業なのだ.
(ああ,言いすぎかなあ.でもいいや.放言しちゃおう)
千早が目的を遂げた後に残る「ぷよぷよが強い」ということなんて,今後の人生において,なんの役にも立たないだろう.
最初の時点で,千早はそう思っている.

….

…….

でも,そうじゃないんだよ!
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「無駄なんかじゃない」

これは単なる言葉だけのお説教ではない.ぷよm@s という物語は,これがホントに実感として伝わるようにできてる.

そう,ゴミを作り出す作業の中で,ゴミじゃないものが自分に残るのだ.

たぶんそれは,最初に手に入れたいと思っていたものとはぜんぜん違うものだろう.でも,これだけ一生懸命,これほど真剣に,こんなに夢中で何かに取り組んだ後ならば,何かが残るのだ.何かを手に入れることができるのだ.

千早は,もしかしたら今後も小鳥さんに勝つことはできないかもしれない.それどころか,対戦することすら叶わなくなってしまうかもしれない.
そうなったとき,千早がぷよぷよ練習に費やしてきた時間,労力はすべて無に帰してしまうのか.ムダになってしまうのか.ゴミになってしまうのか.

そうじゃないんだ.
「無駄なんかじゃないんだよ、千早…」

….

そう,無駄なんかじゃないんだ.だから私は千早のようにがんばりたい.
そうしたら,ゴミを作り出すだけの仕事の果てに,何かを得られるかもしれないんだ.

…この千早の姿を見て,自分に重ねて,感動せずにいられるはずがない.
それが,まさにそれこそが,私にとって ぷよm@s が特別な物語として感じられる理由なのだろう.

….

さあ,もうすぐ第三部が幕をあける.
こんどはどのキャラクターが活躍していくのだろう.
どんな展開が待ち受けているのだろう.

なんとも嬉しいことじゃないか.この世界に浸っていられるときは,まだまだ続くのだ.

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by LIBlog | 2009-11-26 22:48 | 動画サイト関連
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