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「聖書でわかる英語表現」

「聖書でわかる英語表現」(石黒 マリーローズ著,岩波新書) を通読した.

英語の文章を読んでいると,聖書や英米文学などアチラの文化圏では当然のものとして共有されている知識を前提にして書かれている表現にたびたび出くわす.こちとらそんな教養はないので困ることになる.なぜなら,引用元のエピソードを想起させることで,言外に皮肉や批判などのメッセージを伝えるような文章が多いからだ.字句通りに読んでしまえば,そういうメッセージは読み落としてしまうことになる.

本書は,とくに聖書から引用されている表現について解説したもので,その内容はとても基本的なものだけに限られているけれど,私のように無教養な人間にとって非常に貴重な情報をあたえてくれる.

たとえば,スケープゴート(scapegoat)や物語「サロメ」は聖書のどういうエピソードに由来しているのか.
あるいは逆に,山上の垂訓(the Sermon on the Mountain)からどのような英語表現が引用されることが多いのか.
こうしたことを,実際のニュースなどの文章から実例を示しつつ解説している.

繰り返しになるが解説している事項は基本的なものだけで,数もそれほどあるわけではない.あるていど知識のある人は,本書から得られるものは少ないかもしれない.しかも,ほとんどのことはWikipediaあたりを読めばだいたいはわかることだ.
しかし私のように聖書をこれまで勉強したことがないような人は,読んで損はないと思う.ウェブに情報があると言ったって,どこかでまとめて知識を仕入れておいたほうが有益だと思うしね.

本書には,もうひとつ興味を惹かれたところがある.それは筆者がとても信仰の篤いキリスト教徒で(レバノン出身であるらしい),文章のはしばしに宗教者としての価値観がにじみ出ているところだ.
ふだん無宗教者としか交流がない私にとって,彼女の視点は新鮮で面白かった.

by LIBlog | 2010-03-04 22:19 | マンガ・本
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