英語初級者向け TED talks その2

TEDカンファレンス は,さまざまな分野で活躍する一流の人物が一堂に会して,互いの仕事や伝えたいメッセージについてプレゼンする,非常に魅力的なカンファレンスだ. そこで行われる講演は TED.com にて無料で視聴することができる.

以前,英語初級者向けTED talksと題して,癖のないアメリカ英語で,ゆっくり明瞭に話している講演をいくつか紹介した.

しかしそれ以降も TED.com の充実はとどまるところを知らず,いまやオンラインで視聴できる講演は700以上あるし,日本語字幕がついているものも300を超えた. そこで,新しく加わった日本語字幕つきの動画の中から,やはり (私のような) 英語初学者向けの講演を挙げてみたい. いずれも前回と同じように内容は問わず,
●発音が明瞭で,
●ゆっくり話しており,
●癖のないアメリカ英語である

と私が感じたもので,20分前後の講演を三つほど.

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ひとつめ.

マイケル・サンデル:失われた民主的議論の技術 (Michael Sandel: The lost art of democratic debate)

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政治哲学者マイケル・サンデルによる講演. 日本でもNHKのハーバード白熱教室シリーズで最近注目を集めていた人だ.

同シリーズの英語版(すなわちオリジナル版)はすべてYouTubeで視聴可能 (→ Justice with Michael Sandel - Home) で,しかもYouTubeの動画は英語字幕付きで見られるから,彼の主張をもっとよく知りたくて時間に余裕がある人は,そちらを見たほうがいいかもしれない. いっぽうTEDの講演はというと,日本語字幕を同期して見られるところと,20分弱で完結しているところがいい. YouTubeのものと同じように,英語はゆっくりで明瞭だ.

TEDでの講演で扱われているのは,ハーバードでのレクチャーシリーズのような「正義とは何か」ということ自体ではなく,もう少し上位の概念について. しかしここでもハーバードと同じように,きわめて具体的な事例が取り上げられ,それについての対話が行われる.

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「いい答えだ. きみの名前は? ピーター. ああ,マイクはそのままで. 誰かピーターの答えに反論がある者は?」

サンデル教授に導かれて,楽器をどうやって配るか?といった小さな例から,同性婚の是非という大きなテーマまで,このわずかな時間でさまざまな意見が交わされる. 個別バラバラだと思われたそれらの例は,講演の最後にはひとつにつながり,彼の主張を明快に伝えることになる.さすがに話の作り方が非常にたくみだ. みごとと言うほかない.

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ふたつめ.

ジル・ターターのSETI(地球外知的生命体探査)への参加の呼びかけ (Jill Tarter's call to join the SETI search)

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天文学者による,SETI (Search for Extraterrestrial Intelligence at Home),地球外知的生命体探索についての紹介.非常にゆっくりはっきり話しているので分かりやすい.

じつはこのプレゼンテーション,とくにすぐれた講演に対して与えられる TED Prize を受賞している. それもよく分かる話で,これは数ある講演のなかでも特につよく印象に残っている. 何万光年もはるかかなたの場所だとか気が遠くなるほど離れた時間についての話を聞いていると,どうにも不思議な感覚に陥ってくるのだ. 人類ってなに? 歴史ってなんだったの? どうでもよくね? みたいな. そんなふうに一度おもいっきり日常生活のパースペクティブとはまるっきり違うところに自分を置いてみるのも悪くないのではなかろうか.

ところで,もしほんとうに地球外知的生命体などというものが見つかったら,いったいどうなるのだろうか. 実際のところ何が起こるか想像もつかない. 演者は地球外知的生命体の発見が,すべての人類の抱える問題を解決するきっかけになる,などというポジティブな捉え方をしているんだけどね. たしかにそれもありうるけれど,逆もありうるわけであって…….

なお演者はちょっとばかり目ぢからがあるのでアップになると気になるが(笑),伝えられているメッセージがそれに負けないくらい力強いので,まあバランスはとれている.

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みっつめ.

ハワード ラインゴールド: コラボレーション (Howard Rheingold on collaboration)

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ライター兼雑誌編集者による講演. これまた非常にゆっくりはっきり話しているので分かりやすいとは思う. しかし独特の口調と言うか口癖というか,そこらへんがなじまない人もいるかもしれない.

内容はというと,人々のつながり,社会の構造というものが,マンモスと戦っていた古代にはじまりネットで結ばれた現代にいたるまで,どのように移り変わり,そしてこれからどうなっていくかということについて考察している講演だ. ゲーム理論の囚人のジレンマ共有地の悲劇などを引き合いに出しつつ,インターネットにより莫大の数の人々が直接つながった世界での,望ましい社会のありかたについて述べている.

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ネットの浸透とともに,すべてをフリーで共有しようとする消費者と,そうはさせまいとする供給者の対立がそこかしこに見られるようになってきたように思う. しかし本当に両者の対立は避けられないのだろうか. どちら側の利益にもなるような関係は,構造はありえないのだろうか.

ポイントは相互の信頼関係にある. 互いに相手を信頼できない状況では,囚人のジレンマが発生し,どちらも最適な行動をとることができない. しかし互いに相手を信頼できる状況では,互いに利益を最大化するような行動をとれる. そのような状況を,関係を築くにはどうしたらいいのだろうか.

講演で取り上げられている具体例も豊富だ. マイケル・サンデルの講演で挙げられていた,どのように議論をたたかわせ,ルールを決めるべきか? という問題がふたたびここで問われる. またジル・ターターのSETIプロジェクトは,囚人のジレンマに陥らずゲームがうまく運んだ例として挙げられる. いわばこれまでの講演のおさらいのようにして見ることができるプレゼンテーションになっている. いくつか動画をめぐってみて,最後にこれを見るのも一興かもしれない.

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TED talks は,各国語字幕がついている,一つのトークが5~20分ほどと短い,なにより内容がどれもこれもめちゃくちゃ面白い,と,英語学習にぴったりの教材だ. また都合がいいことに,おおっぴらに動画ファイルや音声ファイルをダウンロードできる (動画プレイヤーの下にDOWNLOADボタンがついている) ので,私は iPod に入れて聴くことにしている. 音声ファイルはところどころ編集されていることがあって,それだけは不満に思っているのだけれど,まあぜいたくは言えないわな.

私にはいまのところ難しいが,いつか字幕なしで初見の講演を理解できるようになりたいものだ. 同じように英語を学んでいらっしゃる初学者のみなさま,がんばりましょうね. 字幕なしで見る TED talks は,たぶんもっとダイレクトで面白いでしょうから.

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by LIBlog | 2010-07-19 23:11 | 動画サイト関連 | Comments(0)
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