シンデレラ候補生:喜多見 柚

ガルシアPの 「シンデレラ候補生:喜多見 柚」 が面白かった,という話.


見るたびに,この出会いがどうして「奇跡」なのか,その意味が変わってくように思われた. それが楽しかった.

以下では,それについて書いてみたい.

ネタバレ格納~











一回目の印象は,こんな感じだった.

……うん,たぶんこの子はどこにでもいる普通の女の子なんだな. なにか特別に情熱を持っている子とか才能を持っている子とかに淡い憧れを抱きつつ,普通に過ぎていく日々に不満を持っているわけでもないような子なんだ. そんな子が,いまの日常を外れてアイドル業なんていう特別なところに飛び込んでいくってのは,そりゃー奇跡でも何度か起きない限りはフンギリがつかないってもんだよね.

まあでも,たまたま声をかけられた,たまたまクリスマスツリーがあったからもう一度会えた,なんていう 「奇跡」 は,偶然そうであったということに過ぎず,それ以上のものではないよな. この子にとっては壁を乗り越えるために,背中をポンと押してもらうために十分なものだったかもしれないけれど,それはこの先にやってくる,楽しさだけではすまないこと,さまざまな困難や辛さを乗り越えるための保証を何ひとつ与えるものではないだろう. 現にあのプロデューサーは,自らの 「確信」 の根拠を説得的に言えなかったじゃないか. なにやら運命めかした言い方でしか言えなかったじゃないか. そういう意味では,ビギニングオブザビギニング,最初の一歩を踏み出す物語であって,二歩目もきちんと踏めるかどうか,三歩目で引き返したりはしないだろうか,そこらへんが不安でもあり,楽しみでもある,ってところかなあ.

…….

ってな印象を抱きつつ見た二回目で,ふと思った.

あれ? 待てよ. あの駆け出しPは 「再会」 を果たしたその理由についてあんなことを言っていたけど,それは本心じゃなかったのかもしれない. あれだけじゃ,ただのロマンチストみたいじゃないか. P本人は意識してなかったかもしれないけれど,あの確信の根拠は,本当はそれだけじゃないだろう. 天海春香のステージを眺めていたあの少女が,あの少女自身が,輝くステージに上がり脚光を浴び喝采を受ける未来を想像したからこそ,確信をもったんじゃないか. だから,駅の方じゃなくステージの方に,確信をもって駆けつけられたんじゃないか.

そう,たぶんPが少女を最初に見つけたとき,少女はあの舞台を仰ぎ見ていただけじゃなく,ステージで踊る天海春香に自分を重ねていたんだ. もうすでにステージの上にいたんだ. その姿に,Pは確信を持ったんだ.

少女にとって,あそこで声をかけられたことは,そして再会を果たしたことは,奇跡としか思えなかっただろう. Pの「確信」 の根拠はまったく説得的じゃなく,なにやら運命めかしたものでしかなかったからだ. だがP本人にとってその 「確信」 は,決して根拠のないものではなかった. 彼の脳裏に映った未来は,たとえ言葉にはできなくても,彼自身に確信を抱かせるのに十分だった. だからあの 「再会」 は,彼にとっては必然だった. ステージではなく駅の方に足を向けるなど,ありえなかったのだ.

今や私にも,この少女がステージに立つ未来が見える. 確信が持てる.この作品で描かれていたのは,単なるきっかけだけではなかったのだ. 彼女のアイドルとしての資質が,直接には描かれなかった才能の一端が,立ち絵の,テキストの向こうにほのめかされていたのだ. 「奇跡」は,いわば必然だったのだ.

…….

そして三度目に見たとき,ようやく気づいた.

ああ,なんだ. あの 「再会」 直前の,少女にとっての初めてのステージで,たった幾度かステップを踏んだだけで,もう彼女はアイドルになってるじゃないか. その資質の,才能の一端は,ほのめかされているどころではなく,はっきりと描かれているじゃないか. やっぱりこの子は最初にあのアイドルに,天海春香に自分を重ねていたんだな. まちがいない.

そうか,この作品に 「奇跡」 があるとすれば,それはあの再会のことではないのだ. 天海春香のステージとの出会い,あれこそが奇跡だったのだ. あそこであの少女はアイドルになったのだ. そこから起こったこと,Pとの出会い,初舞台,再会,これら一連のことは,すでにアイドルになっていた少女にとって もはや必然であり,Pとの 「再会」 への道は分岐してなどいない,まっすぐに続いていた一本道だったのだ.

未来に待ち受ける困難など,少女にとっていかほどのことがあろうか. あの日,あのとき,あの場所で出会った天海春香から,あのステージから引き継がれたものが,彼女を奮い立たせ,前へ進ませるにちがいない. この作品は,そこまで描いているものだったのだ.

…….

見れば見るほどに俺様流な自分勝手解釈が重ねられていって本来の作品から遠ざかっていくような気がしてきたのでこのへんでやめておこうかな.

まあなんというか,まとめると,面白かったですw どうも私は深読みの余地がある作品を深読みしていくのが好きみたいですね. この作品は懐が深くて,何度も味読することができて,たいへん楽しいものでありました.

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by LIBlog | 2012-02-07 00:48 | 動画サイト関連
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