オホマスシリーズ完結に寄せて

最近いちばん楽しみにしていた連載作品,オホマス(デコのおまわりさん)シリーズ.
デコのおまわりさん ‐ ニコニコ動画:GINZA

先日,足掛け二年,全50話におよぶ長期連載が堂々の完結を迎えました.

私自身は,27話の番外編をはじめて視聴して興味をひかれ,当時最新話であった第30話まで一週間で一気見した後,投稿されるたびにリアルタイムで拝見しておりましたが,あまりに面白いストーリー,魅力的なキャラクター,ときに軽妙でときに緊張感あふれるセリフ回し,緻密かつ重厚な設定,そして喜怒哀楽の起伏に富んだ語り口に魅了され,後半になってくると一回の再生時間が40分を超えてくることも稀ではなくなってきましたが毎回あっという間に時間が過ぎて行きました.
シリーズが完結され,次回が投稿されるのを待ちわびる日々も,もう終わりかと思うと,やはり寂しい思いは拭えませんね.とはいえ,今度はバニラマリンPの次回作を待ちわびる日々が始まるわけでもありますが.

作品の概要や登場人物に関してはニコニコ大百科の記事が非常に充実しています.また個人的には,推理もののネタバレが気にならない方ならば番外編(27話37話)からご覧になるのもいいのではないかと考えます.時代状況や警察組織の成り立ちなどが分かっていると面白さが倍増するように思われますので.

格納以下ではシリーズ通しての感想を書いてみたいと思います.ネタバレありです.





さて,ストーリーテリングやキャラクター描写,練りこまれた設定などもさることながら,オホマスの類まれなる魅力のひとつは,なんといっても,組織人として成果を出すということがどういうことか,丹念に(というより執拗に,というべきでしょうか)描かれていることでしょう.

組織の中で成果を出す,あるいは各人の目標を達成するためには,何段階にもわたって異なるレベルでものごとを見て判断することが要求されでしょう.オホマスの中で描かれるものとしては,まずはその集団が達成すべきものは何かの設定とその遂行などは第一段階でしょう.これは37話番外編で「縄張り争いの本質」,より具体的には凛と未央との対立を例にとって解説されていましたね.
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つぎに成果を最大化するような環境の設定が挙げられるでしょう.たとえば35話では,凛が田崎・あずささん・京本さん・春香さんの力関係と性格を正しく見抜いて利用する様子が描かれます.
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あの段階では凛がいったい何をやっているのか私にはよくわかっていませんでしたが,あれはつまり外からの圧力を回避して捜査環境を整えることで事件の真相にたどり着き容疑者を特定したうえで,最終的にあずささんに恩を着せて自ら(の属する集団)の利益すなわち評価を最大化したということなんですよね.しかもそれで正義感の強い琴歌さんの不満をそらすことも忘れない.

凛(おりん)は幼い頃に,偉くなるんだ,出世するんだと心に決めたことで,いままでつらつらと述べたような成果を最大化する能力を異様に発達させたというか,そういうところがあるように思えます.また逆にいおりんや未央,田崎さんなどは,過去の失敗が原因になっているのでしょうけれど,多くの組織人とのズレがあり,それによって少なくともこれらのレベルでの実務能力に欠ける面があって(といっても,それが悪いことだとは,視点によっては必ずしも言えなかったりもするのでしょうけど),たとえば未央は部下のモチベーションをあきらかに下げて操作に支障をきたしているという点で失敗しています.これも凛と未央とが綺麗に対照されていましたね.そして千早の意図を見抜けず道警との信頼関係を構築することにも失敗した井持・いおりんコンビはここにおいて能力の差を見せつけられた格好になるでしょうか. 逆に,肇さんはさらに,いおりん達のもたらす不確実性も考慮に入れて行動して成功しているといえるでしょう.まったく見事なものです.これはゲンさんが起こした「奇跡」により生きた布石だったのでしょうけれど,あの「奇跡」がなくても,いおりん達が超頑張ったり,田崎+聖來さんが頑張ったりすればやっぱり生きたでしょう.

そしてさらに,数年,数十年経って見えてくる長期的な影響というものも挙げられるかもしれません.最終話前編では,結局のところいおりん達の頑張りと桃華,肇たちの暗躍は水本ゆかりさんの手柄にむすびつき,彼女が「やりたい放題の検察官人生」を全うする助けになったということは,ひょっとしたら長期的に見たらよくない影響のほうが大きかったのかもしれません.警察組織にとっても,ひいては大局的な治安維持にとっても(しかし,さらにそのことも,もっと長期的視野に立てば良いことだったかも……と永遠に続いていきそうですが).

小池一夫によりますと,よいストーリーテリングというのは,読者(視聴者)が「これは自分のことだ」と思わせるようなものを言うのだそうです.

いい物語(はっきり言ってしまえば売れる作品)とは、多数の読者一人一人に「ここには自分の事が書いてある」「自分とこの書き手は同類だ」と思わせる事が出来る作品であると僕は考える。(小池一夫)
https://twitter.com/koikekazuo/status/101994098243801088

これはまさにオホマスに対し私が感じていたことでした(もちろん,私自身がオホマスの登場人物のように有能だと言いたいのではありません!).いおりんのように個人プレーにおいて有能さを発揮する人物だけでなく,さまざまなレベルでの組織戦の戦い方を描いている作品に今のタイミングで出会えたのは,私にとって非常に幸運なことだったと思います.私個人の,あるいは私個人が属する世界の,環境の変化にきわめてよく対応しているように思われましたから.そういう時期にあって,DMJ・伊織的な視点と凛・千早そして肇さん的な視点とを比較して見られたことは,まさにタイムリーに興味を惹かれたことでもあり,また(たぶん)多くのことを学べたと考えています.

とはいえ,それは今の自分のレベルで読み取れることを読み取っただけのことで,また最初からシリーズを見返してみると違ったことが見えてくるのでしょうし,たとえば5年,10年と経って見なおしてみると,今の私では見えなかったことが見えてくることもあるでしょう.まだまだ私ごときには底を見せてくれない作品だなぁと思う次第であります.


ずっとシリーズを追いかけていって,最終話にたどり着いたとき,後日談として語られるキャラクターのその後が心に染み渡りますよねぇ.あれは本当にいいものです.利害の対立する集団や,異なる組織間の縄張り争い,そして過去の確執まで入り乱れて,「ギスギスした物語」という面があったことは否定できませんが,しかし最終話ではそうしたいわば利害による対立を超えたところで,旧友たちがかつての友情を取り戻していくのは,本当に,心から,ああ良かったなぁと思えるものでした.ああ,そこに帰っていくんだなぁ,帰る所があるんだなぁと.ここに辿りつけるなら,あの戦いの日々は良かったと思えるなぁと.

そんなわけで,作者のバニラマリンPにおかれましては,素晴らしい作品を本当にありがとうございましたと御礼申し上げるとともに,ご多忙中とは存じますが,次回作を!次回作をぜひっ!待ちますから!いくらでも待ちますからッッ!とひらにお願い申し上げ,このなんだかまとまりのない文章を終わらせていただきたいと思います.


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by LIBlog | 2015-03-04 11:44 | 動画サイト関連
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