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「3月のライオン」 反正義の社会適応

羽海野チカ先生の 「3月のライオン」 の話.


今週のヤングアニマルを読んだけど,3月のライオンはやっぱりすげー面白いね. やーしかし,これどうすんだろうな.

当然のことだけど,あのいじめっこたちに対して,共感に訴えかけるような説得が有効とはとても思えない. たとえば 「やられる相手の立場になって考えろ」 と言ってみても,もとよりそんなことは考えた上でやっているに決まってるじゃないか. 彼女たちは,「相手の立場になったらものすごく嫌だろう,だからやるのだ」 という逆説的な動機を持っているに違いない. だってイジメってのは相手が嫌がるからやるものでしょ.

だから,問題を根本的な解決に導こうとするならば,上からムリヤリ徹底的に押さえつけるか,もっと楽しい何かを与えるしかない. ゲンコのひとつもくれてやるとか,なにか夢中になれるようなものを見つけさせるとか.

ただまあ,ゲンコくれてやったり,ある種体育会系なグループの中にぶち込んで「しつけ」というか「矯正」というか「更生」というか,みたいなことをするってのは,問題を根本的に解決する途の一つではあると思うけど,絶対に正しいとは言いたくないのだ. 同じように,いじめっこたちに生きる意味だの充足感だのやりがいだのを与えて,あの無為に淀み閉じている空間から連れだしてやる――なんてのも,これも根本的な解決につながるのだろうけど,それこそが正しいやりかただとは思えないな.

なぜって,そういうのって今いる価値基準から彼ら彼女らを無理矢理ひっぱり出して,別の価値基準へと当てはめる行為だからね. それは公教育の本質ではあるだろうけど,私個人の趣味には合わない.

じゃあなにが私の趣味に合うかというと,価値基準の変更を伴わない叱り方なのだ. たとえば「もっとうまくやれ」みたいな.

我々が暮らしている社会の一般通念からして,あのいじめっこたちの行為が支持されるということはありえない. そしていったんそれが明らかになれば,見逃されるということも,まずもってないだろう. あの行為は明らかに 「悪」 なのだ. 必要でもないのに不幸を生むような行為なのだから.

ではそのようなことをしたい,という欲求を持つ人はどうしたらいいのだろうか. その欲求を捨てられるような今とは違う価値観に身をおく,というのはひとつの途だろう. だがもうひとつの途もある. うまく社会と折り合いをつけ,そういう欲求を持っているということは隠しつつも,その欲求を満たすことが可能な場所に身をおくことだ. 権力のある地位に上りつめたり,そういう 「遊び」 ができる場所や相手を見つけたり.

自分たちが暮らしている社会で一般に共有されてる正義感や倫理観を持ちあわせていない人や,反正義的・反倫理的なことをしたい人がいる. そういう人に対して学校や教師ができるのは,価値観を「矯正」することだけではないはずだ. その性癖をおおっぴらに出さず,その願望をなんとか叶える場所を探すということを教える,というのも,あるいは可能なのではないだろうか. 表層では 「上からムリヤリ徹底的に抑えこむ」 ことは変わらないのだが,その動機がそのようなものだとしたら……. それはやっぱり,なにかがちょっと違ってくるはずだ.

3月のライオンがもし問題を 「解決」 するのならば,その解答はたぶん更生・矯正のほうになるのだろう. 大人気でおおいに売れている作品なのだから,普通に考えたら社会通念と合わないような解答が選ばれることは,まあ,ないだろうと思う. しかもこれは現場で戦ってる人たちの話なんだから,遠くから眺めて他人ごとのように自分の趣味を押し付ける私の視点などは彼ら彼女らにとってどうでもいいことだろうし.

でも,たとえそうであったとしても,もしこの作品が私の予想を裏切って私にとって納得的な 「解決」 を見せてくれたとしたら……. いやー,そうなったらじつに嬉しいなあ,拍手喝采だなあ,とか思ったりするのでした.

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by LIBlog | 2011-12-19 19:34 | マンガ・本

「ちゃんと描いてますからっ!」 「銀の匙」 「みそララ」

星里もちる先生の 「ちゃんと描いてますからっ!」2巻,読んだ.


いつもいつも原稿を途中でほっぽり出して逃げ出す父親に文句をたれつつも影に徹して原稿を仕上げていた歩未が,今巻では少しずつ独歩の兆しを見せているのが印象的だった. 歩未とお父さん,それぞれに抱える優越感と劣等感が加速していきそうな気がして少しだけわくわく. あさのゆきこ先生の 「夕焼けロケットペンシル」 みたいな展開になるのかなー. 個人的にはもうちょっとこじれてほしいところだがw

………….

荒川弘先生の 「銀の匙」2巻もやっぱり面白かった.


幼い頃から動物の生老病死に間近に接し関わってきた荒川先生の死生観が,主人公の八軒を通してじわりじわりと伝わってくる. これほんと先が楽しみだわ.

………….

それにしても 「銀の匙」 の八軒とか,宮原るり先生の 「みそララ」 の穀物娘たちとかを見てるとしみじみ感じることがある.


あーこいつらは伸びるわー,このまままっすぐ育てば間違いなく伸びるわー,ってね.

そういうポテンシャルがはっきりわかる若者を見ているのは頼もしくもあり,切なくもある. 正直なところを言えば,こいつらに対しては羨望と嫉妬も感じているのだ. こんだけオッサンになると自分がどの程度の奴で,上に行くような奴らがどういう人達なのかもう分かってくるからね. ただまあ,若い人達にどんどん追いぬかれていっても,芽を潰したり足をひっぱったりすることだけはしたくないなー,と思う. みそララの社長のように,せめてこういう子たちの邪魔はしないようにしなきゃ,と誓いを新たにするわたくしであった.

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by LIBlog | 2011-12-18 18:07 | マンガ・本