<   2012年 02月 ( 2 )   > この月の画像一覧

「魔法先生ネギま!」 37巻 ナギとアスナと

赤松健先生の「魔法先生ネギま!」37巻を読んだ.

e0175273_21181528.jpg


以下,ネタバレ含む感想.

────────────────────


全編の半分はあろうかという魔法世界編が終わり,舞台はひさびさの麻帆良学園. クラスメイトたちと過ごす休日からは,懐かしささえ漂ってくる.

とはいえ,物語そのものは魔法世界編から大きく変わったわけではない. 魔法世界の存亡をかけた戦いはネギたちの勝利に終わったものの,長期的な意味での魔法世界の存続という課題は残されたままだからだ.

今巻では,ずいぶん前からネギが語っていた「プラン」が一体どういうものなのかがようやく明らかになった. ネギの手立てとは,魔力を安定して供給しつづけるような環境を新しくつくりだし,魔法世界の存続を目指すという一発逆転の壮大なもの. この事業が成功すれば,「始まりの魔法使い」と「完全なる世界」たちがもくろんだ計画の前提そのものが失われることになるわけだ.

ネギの「プラン」が目指す目標はすばらしい. それが達成されるなら,どんな対立勢力からも文句は出ないだろう. だが当然ながら,目標さえすばらしければ万事OKというわけにはいかない. その目標は達成可能なものかどうか,が問われねばならないからだ.

もしネギが,われわれがいるこの現実世界であの「プラン」を言い出したら,それは荒唐無稽な笑い話で終わっただろう. いまのこの現実世界の科学技術のレベルでは,たとえ100年のスパンをとって考えても,とてもあのような壮大な目標は達成可能なものとは思われない. だがネギまの作品世界には魔法と魔法世界がある. 魔法世界の科学(魔法?)技術がどれだけのものかはよく分からないが,もしかしたら魔法世界の科学(魔法?)技術をもってすればあの「プラン」は達成可能になるのかもしれない.

じつのところネギの「プラン」を待つまでもなく,あのような計画は以前からあの世界の誰かによって考えられていたであろうことは想像に難くない. 生命力が魔力の源だということが判明したその時点で,政策立案者であれ政治家であれ学者であれ,どうすれば問題が根本的に解決するかが分からないはずはないからだ. ほぼ間違いなく,いったん考慮に入れられた上で,達成不可能だとして捨てられたのだろう.

ところが今のネギには,「計画」を達成する上で,ほかの誰にもない決定的な強みがある. 魔法世界全体を一体化できる圧倒的カリスマだ. 「始まりの魔法使い」たちにとっては皮肉なことに,彼らが全力を尽くして魔法世界を消滅せんと企んだおかげで,それを止めたネギは救国の英雄となった. そのネギ自身が計画し,みずから先頭に立って実行する「プラン」は,魔法世界全体から支持されるに違いない. おそらく(地球世界ではなく)魔法世界において,すさまじい勢いであの「プラン」は遂行されていくだろう. 「始まりの魔法使い」たちは,本人たちの意図とはまったく逆に,ネギのプラン遂行におおいに寄与することになったわけだ.

この「プラン」の遂行により,ネギはナギを超えることになるだろう. いや,すでに今の段階でもうナギを超えていると言っていいかもしれない. 「始まりの魔法使い」を蹴散らしたそのとき,ネギはあれほど憧れ追い求めたナギと実質的に並ぶことになった. その後に英雄として歓迎され,しかし息つく暇なく戦後の諸問題を解決すべく奔走しはじめるところまでそっくりである. ところがネギは,ナギたちには手をつけることができなかった魔法世界存続問題の根本的な解決を目指しはじめた. そのとき,ネギはナギを超えたのだ.

いままでネギは父に憧れひたすらその背を追うだけだった. そのままではネギは決してナギに追いつくことはなかったに違いない. しかしいまや彼はそのことよりも大事なものを見出し,それを追い求めはじめた. まさにそうしはじめたそのとき,ネギはナギを超えたのだ. それはネギがネギ自身になったということなんだよな. いつかの麻帆良武道会でナギにかけられた言葉の通りだ.

さてしかし,読者としては計画の達成可能性ばかりに気を奪われているわけにはいかない. ネギにはまだ重大な問題が残されているのだ. さんざん超えた超えないの話をしておいてアレだが,36巻最後で登場したナギ(らしき人物)について,そして黄昏の姫御子ことアスナ姫――神楽坂明日菜について,である. アレは本当にナギなのか? そうだとしてもそうだとしなくても,アレを今後どうするのか? そしてアスナをどうするのか?

アスナについては,そのまま墓守りとして眠りにつき,そしてネギの計画が達成されたそのときに二人は100年の時を超えて再開を果たす――という展開になっても,じゅうぶんに感動的な物語になるとは思う. 旅立つヒーローと帰る場所を守るヒロインという構図は,きわめて古典的なものではあるがそれだけになじみも深いわけだし. だがしかし,神楽坂明日菜の人格がそのときまでに消失してしまうという可能性が語られたいま,ネギは決して彼女をそのまま眠りにつかせはしないだろう. なぜなら,それは魔法世界編でかつてフェイトに迫られ,一蹴した選択――アスナ一人を犠牲にして自分たちとその周りだけが救われることの拒否――にふたたび立ち返り,それを台無しにしてしまう行為だからだ.

ではどうするのか,という話になるが,残りは38巻の一冊だけということを考えると,おそらくナギ問題とアスナ問題が,同じひとつの問題として解決されるのではないか,と想像している.

……というか連載ではもうここらへんは解決しているのかな. 私は単行本派なので本誌連載がどうなっているのか分かっていないんだよね. すでに答えが出ている(かもしれない)問題を予想することほどバカバカしいことはないような気もするけれど,まあ気にしないでつづけよう.

……んで,ナギ問題を考えると,たぶんあれは本物のナギだろう(残り一冊しかないわけだから別の可能性はありえないと思う). どういうわけかナギは(あるいは“お師匠”も同時に),かつて否定した道を選ぶことになってしまった. あるいはかつて否定した人物そのものになってしまった. それはなぜか. そのわけは,たぶん「始まりの魔法使い」あるいは「造物主」という存在がなんなのか,そして「造物主の鍵」,「コード・オブ・ザ・ライフメーカー」という魔法(?)とはなんなのか,あるいはさらにさかのぼって,魔法世界とはそもそもどのようにして成立したのか,という仕組みそのものに関わっていることなのではないか. そしてその仕組みの中に「黄昏の姫御子」アスナ姫も組み込まれていて,その仕組みを解くことでアスナ姫が墓守りとして眠りにつかずにすむ可能性が開かれることになる――のではなかろうか.

うーむ.マンガ版「ナウシカ」とか「まおゆう」とかに影響されすぎな見方かなあ. というか残り一冊でそこまで語るのはやっぱり無理な気もするなあ.

まあ,これまでに描かれているのに読み落としている情報が残っている可能性も高いと思うので,既刊を読みなおしてみないことにはなんともいえない,かな. しばらくはネギま漬けの生活を楽しみつつ,最終巻が出るのを心待ちに待ちたい. この偉大な傑作の堂々たる完結をリアルタイムで見届けられるのは僥倖だ.


関連記事:

魔法先生ネギま! 学祭編と超鈴音について徒然なるままに

魔法先生ネギま! 33巻の「完全なる世界」をめぐる一考察

魔法先生ネギま! 33巻の「完全なる世界」をめぐる一考察 その2

[PR]
by LIBlog | 2012-02-22 21:12 | マンガ・本

シンデレラ候補生:喜多見 柚

ガルシアPの 「シンデレラ候補生:喜多見 柚」 が面白かった,という話.


見るたびに,この出会いがどうして「奇跡」なのか,その意味が変わってくように思われた. それが楽しかった.

以下では,それについて書いてみたい.

ネタバレ格納~

More

[PR]
by LIBlog | 2012-02-07 00:48 | 動画サイト関連