Nature 461, 784-787 (2009).リスザルは二原色でものを見ている.そこにもう一色を見分ける光受容体をぶち込むことで,なんと三原色でものを見られるようになるという報告.ちょっと前にニュースで見た気がするなあ.
色の区別は網膜の錐体色素(cone pigments)が三種類存在することに依拠しており,そのうち一つの遺伝子がなくなると二色型色覚(dichromats)になる.これは程度の差はあるものの特に男性では決して珍しくない.で,もともと二つの錐体色素しか持っていないために二色型色覚であるリスザルの網膜に,もう一つの錐体色素遺伝子をもつアデノウイルスを感染させてむりやり三つの錐体色素をもつ個体をつくる.そうするとなんと三色型色覚ができるようになる.驚くべきは,この実験は大人のサルに対して行われていること.ふつうは視覚ってのは子供の時期に入力がないと発達しないものだから,大人になってから新しい色覚を手に入れることができるというのはちょっとすごい.この結果を受けて,色盲に対する遺伝子治療が現実味をおびてくるよね. Nature 461, 814-818 (2009).タイトルは "Direct RNA sequencing".シンプルでいいね.主に mRNA を標的にして,RNA をクローニングすることも cDNA に変換することも増幅することもなく直接シークエンシングしてしまおうというもの.逆転写活性をもつポリメラーゼと,スライドガラス上にpoly(T)をアレイ的にくっつけたものを用意して,逆転写をしながらシークエンスを読んでいくわけね.Helicos社のHeliscope を使っているんだけど,もともとこいつはDNA増幅を必要としない次世代シークエンサーだった.ランニングコストはちょっと高めだったけど.ちなみに次世代シークエンシングに関しては Nat. Biotechnol. 26, 1135-1145 (2008) がよくまとまってた.最近探してないけど新しいレビュー出たのかなあ? あと Trends Biotechnol. 26, 602-611 (2008) とか Nat. Biotechnol. 26, 1146-1153 (2008) とかには,さらに次の世代のシークエンサーが紹介されてた.たとえば SMRT sequencing とか nanopore sequencing とかが開発中で,前者はヒトゲノム30億塩基対をたった3分ですべて読んでしまう(!)というトンでもないものだった.ヒトゲノムプロジェクトが一体いくらつぎ込んで何年かかったと思っているんだまったく.
by LIBlog
| 2009-10-08 13:59
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