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221日目 論文メモ

Nat. Rev. Genet. 11, 4-5 (2010).この論文 (Mol. Syst. Biol. 5, 321 (2009)) の紹介記事.
ヒトのメンデル遺伝病 (参照:遺伝子疾患 - Wikipedia ) における遺伝子型と表現型の関係とはどういうものだろうか.筆者らは,遺伝型と表現型の関係については,一遺伝子産物だけに注目するような古典的な方法ではなく,遺伝子ネットワークの中での意味を捉えるべきだという.
筆者らは,遺伝子ネットワークに与える影響という観点から,遺伝子に起こる変異を二種類に分類する.ひとつは翻訳開始点近くでナンセンス変異が起こり,短い遺伝子産物(truncating mutation)が生じる場合で,このような翻訳産物は すみやかに分解されるため何の機能も果たさず消失すると考えてよい.もうひとつは主としてミスセンス変異により,ある特定の生理的・生化学的機能だけが失われる場合(in-frame mutation)だ.それぞれ変異がネットワークに与える影響について,前者を“結節点除去”(node removal)と呼び,後者を“末端の乱れ”(edgetic pertubation)と呼んでいる.彼らは そのような分け方から予想されるモデルを以前から提唱していた(Nat. Methods 6, 843-849 (2009)).
さて本報告では,ヒトの50,000以上のアリルそれぞれが truncating mutation か in-frame mutation かで分類し,それぞれに対応する2,000以上のメンデル遺伝病を解析した.その結果,上のモデルから予想される現象が確かに見られることを示している.たとえば in-frame mutation では常染色体優性である病気が劣性であるものの10倍以上にのぼることなど.これは in-frame mutation はドミナントネガティブ効果(dominant negative effect,参照:ドミナントネガティブ作用:バイオキーワード集:実験医学online )を持ちやすいことに由来すると考えられる.
また逆に,症状から truncating あるいは in-frame と予想されるアリルを取ってきて,インタラクトームデータなどから予想される結合パートナーとの相互作用を yeast two hybrid で確認し,たしかに node removal または edgetic pertubation であることを いくつかの例で確かめている.
by LIBlog | 2009-12-22 18:19 | さいえんす関連
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