科学の面白さは「発見史」に凝縮されている

最近読んだ ふたつの本がとてもおもしろく,科学そのものの面白さを伝えるヒントを教えられた気がした.

細胞発見物語 (山科 正平 著,ブルーバックス)

人物で語る物理入門 上下 (米沢 富美子 著,岩波新書)

 

科学の目的は,ある現象の裏にひそむ仕組み・機構を「発見」することだ. 「発見」の興奮こそが科学の面白さそのものといっても過言でなく,仕組み・機構だけ伝えられても あまり面白く感じないのではないだろうか.

成功した科学者の伝記を読むと,「発見」がいかにエキサイティングな体験なのかがよくわかる. 生物系ならワトソンの「二重らせん」あたりが自叙伝として有名なところだろうか. 個人的には利根川進立花隆がインタビューした「精神と物質」に思い入れが深い. この本に出会わなければ私は生物学の道には進まなかった.



しかし,一代記よりももっと「発見」の面白さが引き立つ伝え方があるのではないか. それが「発見史」だ.

「発見史」という言葉は,ここでは「ある発見を,科学全体に対して位置づける」というような意味で使っている.

科学史は発見史である. 発見史を知ることは科学を知ることであり,それは異様に面白いことだ.
ある一つの「発見」が,科学の体系全体の中にどのように位置づけられるのか知ること,言い換えれば その「発見」の科学全体における意味が分かること,これは「発見」や「理解」をレベル分けするとしたら最上級のものではないだろうか. サイモン・シンの著作がどれをとってもめちゃくちゃに面白いのは,まさに「発見史」が主題になっているからだろう.

冒頭のふたつの本も,「発見史」の物語だ. 発見の「意義」を伝えることが第一の主題であって,そこに焦点をしぼり,そこがクライマックスであるような流れで全体が構成されているので,シンの著作と同様に めちゃくちゃ面白く読める.

「細胞発見物語」は顕微鏡の発明・洗練の歴史と,細胞そのものや細胞内小器官などなど,それに伴って発見されてきた数々の生命現象の「発見史」が語られる. また「人物で語る物理入門」は,古典力学のニュートン,電磁気学のマクスウェルなどなど,その分野を確立するのに中心的な役割を果たした人物の おもな業績と「発見史」が解説される.

一つだけ例をあげてみたい. 「人物で語る……」の,冒頭からニュートンまで.
ニュートンの「万有引力の法則」,「万有引力は距離の二乗に反比例する」という発見の意味,意義,位置づけは何なのか. それは,それまでに達成されていたコペルニクス,ガリレイ,ケプラーらの成果をすべて統一したことだ. ……ということを伝えるための流れが本書冒頭からの数章に つらぬかれている. それを伝えること,発見の「意味」を伝えることこそが大事なのだ,という確信が著者にある. それがたまらない面白さを生んでいる.

「発見史」はもっと学校でも教えるべきだよなー. あらゆる科学的知識の裏には「発見」の興奮があるわけだし,その「発見」によってどういう視点が与えられたのか,ある現象にどういう解釈が与えられるようになったのか,ってことを教えるのは重要だと思う.
というか,むしろ「発見史」は事実そのものより強調して教えられてもいいんじゃないかな. だってそれって面白いし,面白ければ ほっといたって興味がわいて勉強するだろうからねえ.

……ここまでの文章を読み返していたら,「発見」がゲシュタルト崩壊した件.

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by LIBlog | 2010-05-10 22:56 | さいえんす関連
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