2010年 05月 27日 ( 1 )

RNA editing

Trends Genet. 26, 221-230 (2010)

レビュー. RNA editing について.

mRNA は,ゲノムから転写されたのちにさまざまなプロセシングを受ける. スプライシング,キャッピング,poly(A)付加などなど. RNA editing も RNAプロセシングの一種だ. 本レビューは RNA editing, とくに真核生物ではもっとも広範にみられる Adenosine-to-Inosine modification (A-to-I 修飾),すなわち転写後に A が I に修飾される editing,に焦点をあてて解説をしている.

Adenosine は,adenosine deaminase acting on RNAs (ADARs) により脱アミノ化されることで Inosine となる. Inosine は mRNA の高次構造形成や翻訳において Guanosine と同じような性質を示す. したがって A-to-I 修飾は A が G に置換されたような変化を mRNA にもたらす. これがコーディング領域の非同義置換 (non-synonymous codon change) であればアミノ酸配列の変化を,そうでなければ,たとえば mRNA の安定性やスプライシングパターンの変化,また miRNA のターゲットの変化などなどを生じることになる.

A-to-I 修飾を受ける遺伝子は数百にものぼるのだが,多くの場合,同じ配列でもコンテクストに依存して editing を受けたり受けなかったりするようだ. これを決定しているのが ADARs とその関連因子だ. A-to-I 修飾は,おもにコーディング領域,イントロン中の繰り返し配列,そして miRNA precursor が受けるのだが,いずれの場合も editing を受ける配列とその周囲は二本鎖を形成していて,そこが ADARs のターゲットになる. ADARs のターゲットとしてもっとも多いのがトランスポゾン由来の配列を含むもので,なかでも霊長類では Alu element が特に多い. Alu を含む転写産物のほとんどが editing を受けうるらしいが,その機能的意義は多岐にわたり,全貌はいまだ不明だ.

ところで ADARs の発現パターンだけ見ても editing を受けるか否かは判断できない.なぜなら ADARs は核移行やコファクターや SUMO化,さらには self-editing などにより活性を制御されているからだ. なおマウスでは Adar1 の KO は造血系の異常により胎生致死となり, Adar2 の KO はてんかん性発作により生後まもなく死亡. つまり神経系だね. というわけで RNA editing は胚発生に必須であることがわかる. Adar2 KO の表現型はほぼすべてグルタミン酸受容体の editing 異常によるものといえるそうだ. また A-to-I 修飾はグルタミン酸受容体のほかにセロトニン受容体やカリウムチャネルなど中枢神経系に発現する mRNA によくみられることが知られており,ここに生じる異常が てんかんや筋萎縮性側策硬化症 (ALS) の原因である可能性も示唆されている.

RNA editing は tRNA や rRNA では非常にさかんに生じていて,それに関連する疾患も複数知られている. しかし mRNA における editing とその意義については,まだあまりよくわかっていない. トランスクリプトーム解析が それほど困難ではなくなってきた現在,こいつも研究対象としてはおもしろいかもしれないね.

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by LIBlog | 2010-05-27 19:08 | さいえんす関連